Aのハロウィンで、タイトルは「ハロウィンだったから」

【第1回】短編小説の集い 投稿作品一覧 - 短編小説の集い「のべらっくす」

 

 

「ハロウィンだったから」

 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 

 

「じゃーん!!昨日のハロウィンちょ〜楽しかった ♪ 今年はSexy魔女になってみたのだ♡ 似合うでしょ笑?髪もふわふわの巻き巻きにしてみたのヾ(*´∀`*)ノ ちなみに亜実ね去年はナースのコスプレしたよ♡ みんなでクラブで大はしゃぎしてめっちゃ楽しかったv(´∀`*v) 来年もみんなで一緒にコスプレしよねっ\(^o^)/」

 

 

ナースの写真も見たいぞっ!!ってか最後オワタじゃねぇかよ!とかツッコミながら「いいね!」を押す。言っておくが俺の「いいね!」は他の「いいね!」とは違う。雑誌の読者モデルをやってるだけあり亜実はめちゃくちゃカワイイ。髪は細くて柔らかくていい匂いがするし、肌はぷるぷるのツヤツヤだし、目は大きくてクリクリしていて、スカートからスラッと伸びる脚がとてもキレイな女性だ。(余談だが亜実と俺は同じ大学のテニサーに入っていて練習の時に俺はその美しいをばれないように目で追う事に余念がないんだがこの間他の女子にその様子を気付かれてなんとも言えない顔をされた時は)その日はバカみたくたくさん写真を撮ったけれど、とびきりのカワイイ笑顔でたくさんの女子を従えながら自分がセンターに陣取ってる一枚を選ぶあたり、さすがである。とにかく亜実はカワイイのだ

 

 

 

***********************

 「てるぉ〜!!」

俺の名前はてるお。輝く男と書いて輝男。

 

「きょぉの、てる、なんか、おしゃれだねぇ〜 笑 ♪ 」

キタ。亜実にオシャレの事を褒められるとかなりうれしい。俺はユニクロなんかも上手く取り入れつつ、オシャレはお金じゃないよねなんて、分かったような事いいながら一応それなりにオシャレでイケてるクラスタに属すよう努力をしている。しかし残念ながら俺は2枚目ではない。

 

 

「いやいやw普通でしょ。てかいつもっしょw?」

「あしょぉーーー でしゅかぁ〜〜〜〜 笑  い”ぇ〜〜〜〜〜いっ 笑!!!!!」

 「ってか亜実ヤバくないw?めちゃ酔っぱらってるじゃん w どんだけ飲んだんだよw」

「ちょ〜〜〜やばいんですけどぉ〜 笑!てか、ハロウィンちょーー楽しいっ 笑!」

「ウケんだけどっw」

「どっか行くぅ〜?????」

 

 

 

 

 

 

キタと思った。

 

 

 

 

 

 

この日ほど、「どっか行くぅ〜??」がすばらしいフレーズだと思った夜はなかった。「どっか行くぅ〜??」は、カワイイ娘がクラブで言うと「ホテル行きたいの」になるのだ。なんて日だ。ハロウィン、めちゃくちゃ楽しい。何だこれは。ハロウィンやべぇっす、最高っす!俺、どっか行くぅ〜っす!!!!!って思った。そしてそん時ばかりはめっちゃくちゃ2枚目キメてやった。びっくりするくらい2枚目キメてやった。ただ、「何言ってんだよ〜w?みんないるじゃんかよw」なんていう形式的なお決まりの台詞を吐く事はしなかった。というよりできなかった。そんなお決まりの台詞を吐く事すら怖いと思うくらい、俺は亜実としたかった。ただ、びっくりするくらい2枚目キメてやった。

 

 

 

 

*********************** 

 

 

 

その夜が忘れられないのだ。その夜を思い出して、何発もの花火を打ち上げてきた。予想以上にスピード発射して亜実に苦笑いされた部分はカットしつつも、単にその夜を思い出しなぞるのではなく、その夜をネタに妄想をふくらませ、ストーリーをアレンジし、勝手につくった台詞を亜実に言わせ、その夜以上の出来事を俺はあれから毎日あじわっている。だがしかしだ。生身の亜実を俺はもう一度、抱きたい。メイクが崩れたいやらしい目で俺の富士山を咥える亜実が見たいし、男の俺にはどう頑張っても出す事ができない甲高く潤んだ声で喘ぐ、亜実の声が聞きたい。そんな風に思うだけで、もう一発花火を打ち上げる準備が整ってしまう。「親方ぁ〜!!いつでもいけまっせぇっ〜!!!」なんて言ってる場合ではない。

 

 

 

 

*********************** 

 

 

 

「よっ!(スタンプ)」

 

 

 

 

スタンプは便利だ。しかし未読のまま返信がない。ちなみに亜実の返信はいつも早い。地獄のミサワっていうセレクトがまずかったか。クマのブラウンとか、もっとかわいいやつにしとけば返信あったんじゃねぇか。亜実は読者モデルもやってるし今日予定パンパンで忙しいだけでほんとに返事できないだけだろ〜が!とか。色々理由を用意したが、4時間5時間と時間が経って、これは意図的な未読だと認識せざるを得ない状況になった。この時ばかりは未読で無視されるより既読で無視される方がよかった。その方があの夜以来、亜実のどこかに俺がつっかかている感じがして、亜実の中の俺をもっと大きくできる余地がある気がしたから。富士山の話ではない。だがある意味富士山だ。その方が、どうしていいかわかんないよって思ってる亜実が見える気がした。だが「未読」の時間で亜実は俺に線を引いている事はなんとなくわかった。

 

 

*********************** 

 

 

「ごめんごめん!今まで撮影でスマホ見れなかったの/(^o^)\」

 人は嘘をつく時2回同じことを言う。大事なことだからではない。俺にとっては大事だ。

 

「どぉしたぁ?」

さんざん時間を置いて、「どぉしたぁ?」はねぇだろう。その「ぁ」はなんなのだ。つかなんて返せばいいんだよ。とりあえず時間を空けずスマートに返信したかった。

 

 

 

 

( ´ー`)y-~~」

 

 

 

 

自分で打ったが、この顔文字はナシだろと思った。俺は遅いよぉ〜、待ったよぉ〜っていうニュアンスでこの顔文字選んだのだが、なんだこれは。捉えようによっては思いっきり「今夜もどうだ〜い?」じゃねぇか。俺は金にモノを言わせて女を抱くしょうもない中小起業の社長かよ。なぜこの顔文字を選んだ。せっかく亜実から返事が返ってきたのに、これじゃあまた返信こねぇじゃねぇかよ。

 

 

「今度ランチ行かない?」

すかさず苦し紛れの定型句を使う。

 

 「いいよっ♪パスタ食べたい♡」

「パスタいいね。あ、美味しいオシャレなお店最近見つけたから今度行こうよ。」

 たいしてパスタ好きでもないし、いい店もひとつも知らない。

 

 「いきたぁ〜い o(´∀`)o!

「おk。いつ空いてる?」

「来週の火曜日空いてるよん♪」

カワイイ娘は一日しか候補日を提示しなくても許されるらしい。

 

おk。わかった。授業終わったあとそのまま向かおっか。」

「わかった♪たのしみぃっo(´∀`)o! 」

 

 

 

「この間のハロウィン、楽しかったね。」

 

 

 

 

 

今度は既読の状態で亜実からの返信がとまった。なぜだ。俺は亜実がわざと未読のまま返信しなかった事を分かった上で、気をきかせてあんな事もあったねアハハってニュアンスで、「この間のハロウィン、楽しかったね。」って言ったのだ。なぜこうなるのだ。おかしいだろ。いや確かに亜実がなんとなく予想していたであろう、「あわよくば」を今もなお狙っているのは事実だ。っていうかあわよくば彼女にしたい。だが、何を勝手に亜実だけで完結して早まってしまっているのだ。俺はあの夜の事を掘り起こしてどうこうするために「この間のハロウィン、楽しかったね。」と打ったわけじゃないんだ。それなのに勝手にこの人また二度目があると思ってるなんて考えるのは、ちょっと待ってほしい。俺とゆっくりこれから始めようじゃないか!?

 

 

 

 

 

 

「ハロウィンだったからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

どぶろっくの「そういうことだろっ(じゃんっ♪)」が、鳴った。気がした。亜実からそれだけが返ってきたのを見た瞬間、それまでぐにゃぐにゃしながらもなんとかつながって流れていた時間が「サッ」と切れて終わったような気がした。もちろんあの夜がそういう夜だったっていう事は分かっていたが、こういうのはやはり文字で直接みるとなかなかつらい。亜実にとってはハロウィンだったからあの夜があったわけだ。ハロウィンになると人は仮装をして普段の自分じゃない自分を楽しむ。しかしおめぇはどうせいつもハロウィンなんだろぉがよと思ったし、ハロウィンは変身イベントじゃねぇんだよこのやろうとも思った。というか、ハロウィンは普段とは違う自分になれる仮装イベントではなく普段は隠している自分を解放するイベントだなとも思った。

 

 

 

 

 「ハロウィンだったからな。またみんなで飲みいこうな!」

おれは2枚目だ。

 

 

 

 

 

 

 

「ランチ誘ってくれてありがとね。楽しみにしてるね。」

待ってくれ!ダメ押しがきた。そういう意味でランチにしたんじゃない。本当におれに感謝しているのなら、いつものようにハートやら音符やら装飾をしろよこのやろう!

 

 

 

 

 

「PANPAKA PAN!(スタンプ)」

 

 

 

 

 

クマのブラウンが両手をあげてる所に紙吹雪が舞ってる、おめでたい感じのスタンプで返してやった。大丈夫だよそんな夜もあるよねって優しく何事もなかったかのように包み込もうとする俺が3割、なんか俺、惨めじゃねぇかよ!が7割。そんな俺の感情をポンッと簡単に代弁してくれるスタンプはやっぱり便利だなと思った。

 

 

 

 

 

*********************** 

 

 

そしてその夜、また一発花火を打ち上げた。

やっぱ亜実、最高っす!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

この「のべらっくす」をきっかけに、初めて小説というものを書いてみましたが、とても楽しかったです。というか自分が書いたこれが小説と呼べるのか、やっぱお粗末で話にならなすぎるのか分かりませんが、そういうの抜きにしても楽しかったので書いてよかったです。ただもし誰か褒めてくれる人がいたらもっと楽しいので、スターください。初心者枠でお願いします。企画してくれた ぜろすけ id:zeromoon0さん、ありがとうございました。