4445.0MHz

 

ステンドグラスを張り巡らした天井から光が差し込み大理石の床を照らしている。木製の重厚な扉が円状に等間隔で並んでいる空間の中央で、白髪混じりの長髪を後ろで一本に結わえた男が、頬杖をついてPCのモニターを眺めている。そしてその男の正面で、金髪のツンツンした頭でパーカーにジーンズ姿のタケシがキョロキョロ周囲を見回している。

 

「ちょっとパツキン、早くこっち来てくれる?」

「あ、すいませんってか、すいません、ここどこすか?つか、なんで俺ココにいるんすかね?」

「あんた死んだから、これから星になるのよ。」

「はぁっぁああ!?何言ってんすか!?てか俺死んだの!?えぁあえ!?マジ!?」

「マジマジ。死んだ死んだ。てかあんた早く座んなさいよ。てかあんた声でかいわよ。ここ響くんだからもうちょっとボリューム落としなさいよ。」

「いやえと、ちょっとまって、俺が死んだっていうのとだからこれから星になるっていうのどっちも理解できないんですけど、っていうかマジ訳分かんないんですけど!?何!?何なの!?」

タケシは顔をしかめ両手で頭をぐしゃぐしゃかきむしった。

「あんた車に跳ねられて交通事故で死んだのよ。まぁ死んでからあっちもそっちも軽く50億年は経ってるからね。そりゃ記憶ないわよ。あと、死んだら人は星になるのよって小さい頃聞いた事あるでしょ?あれ本当なのよ。死ぬと火葬して燃えて人は炭になるでしょ?つまりあんたは今、地球上じゃ炭素なわけよ。そんでもうすぐ、天の川銀河がアンドロメダ銀河と衝突しちゃって地球がバーンと爆発して、地球は宇宙の一部になっちゃうらしいんだけどその宇宙の一部になる過程で炭素のあんたが星になるわけ。という訳で、あんたは今から星になるの。」

男はカチャカチャとキーボードをタイピングしながら矢継ぎ早にそう言った。

 「いや、ちょっと待って。ちょっと待って。全然わかんない。てか、意味わかんねぇわ!頼むから俺バカだからちゃんと説明してくんね?俺がいまココにいる場所は地球じゃないの!?つかココは何なの?ってかあんたバカなの!?」

「ちゃんと説明しろって言ったってさっき説明した以上に説明しようがないわよ。ココはどこだって言われたって特に名前なんてないし、人が星になるためにあるホシとしか言いようがないわよ。」

そういって男は手元のPCをパタンと閉じてタケシの方を見た。

「あんたには一等星になってもらうからそのつもりでよろしく。しかも新しい星座の一等星よ。あんたを見てみんながキレイだね素敵だね、なんだかせつないねって囁くの。素敵じゃない、そういうの。」

「つかさっきからベラベラ一方的にしぇべんのやめてくんね?つか何なの!?おまえ誰?さっきから何言ってんの!?てかマジで言ってんの!?全部嘘だろ!?一等星だか何等星だかそんなん知ったこっちぇねぇよ!興味ねぇよ!マジでおまえうぜぇよ!なんで俺は星になんだよ!!」

「その理由を探しにあんたはいくの。あんたが死んだ訳もココが何処かも、きっとアッチの方にころころ転がってるんじゃない?あ、それと、理由と一緒に覚悟もね。そっちの方がきっとあんた綺麗だよ。」

 「理由とか覚悟とかそんなん知らねぇよ!!ってかマジでうぜぇよ!!」

「そう理由と覚悟よ、どっちもあんたにとって大事なもの。大事にしなさい。それと、あんたの右側の扉ね。そこが開くから。あっちよ、あんたの未来はあっち。」

そして男は立ち上がって後ろの階段を昇り、2階にある棚から一枚のレコードを取り出してプレイヤーにセットした。

 「ここの儀式のようなもので、旅立ちの前に一人一人に音楽をプレゼントする事になってるの。ここで聴く曲があなたのリズムになるわ。」

 そう言って男はレコードに針を落とした。

 

 

- それではお聞きください。ドリーミングでアンパンマンのマーチ -

 

 

 


【第2回】短編小説の集い 投稿作品一覧 - 短編小説の集い「のべらっくす」

 

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