交差点

 

ダメだ。。眠い。。。超眠い。午前3時。。あと2時間。そしたら僕は、この時間と空間から、解放される。恐らく寿命真近であろう、微かに薄暗い光の蛍光灯を見ていると、シンパシーを感じてしまうあたり、もう、結構ヤバいかもしれない。帰りたい。一刻も早く。今日も華麗に沈みたい。ベッドに。

 

「こんばんわ。どうされましたか。」

「今日の夜ー、7時くらいからだと、思うんですけど、なんか急にこのあたりが、めちゃくちゃ痛くて。もしかして盲腸とかだったりするんでしょうか。」

「大丈夫ですか。わかりました、間もなくお呼び致しますので保険証をお出しになってそちらにお掛けになって、お待ちください。」

 

こんばんわって、前提を無視した言葉。そして大丈夫ですかって、なんて適当な言葉。っていうか感情移入してると疲れるんす。保たないんす。だって仕事ってこういう感じっしょ?僕はこの目の前の病人を救ってやる事もできないですし。Mr.doctor、僕が此処にいる理由を教えてくれませんか。

 

「お疲れ様。」

 

 

通りに面したパン屋さんのシャッターが上がり、新聞配達のお兄さんの乗ったバイクが僕の横を通過していく。反対側の歩道を毛糸の帽子を被ったおじぃちゃんが犬の散歩をしながら歩いていて、髪の毛を後ろでぎゅっと一本に結わえた制服姿の女の子が自転車を立ちこぎして、僕の向こうからやってくる。白く差し込む光とひんやり澄んだ空気と一緒に、まちは今日も静かに始まっていく。 

 

信号が黄色から赤に変わった。

道路を挟んで僕の向こう側には一匹の野良猫がいる。

 

 

「僕はこれから帰るけど君は?」

「何処に?」

 

 

 

 


短編小説の集い「のべらっくす」

 

 

帰らない猫もいるのかなって思って書いてみました。続きを書いて格好よく終わらせる自信がなく、なんかすみませんがこれで提出させてください。