僕と僕

「ありがとう。お陰様でだいぶよくなったみたいだよ。」

そう言って晢也さんはベッドから身を起こし横にいる愛香の手を握った。

 

「よかった。昨日も夜中苦しそうにうなされていたから…。」

「ごめん、もしかしてそのせいで眠れなかった?」

「ううん違うの。私は大丈夫だから気にしないで。ご飯にしましょ。栄養のあるものをつくるわ。」

 

Tシャツと下着一枚でキッチンへ向かう綺麗な後ろ姿を見送り、晢也さんはテーブルの横にある煙草を手に取って火をつけた。宙を浮遊する淡い煙とカーテンから刺し込む光を眺めて、晢也さんは深いため息を吐いた。

 

 

「たくさん食べてね。お野菜をたくさんつかったの。」

「すごいね。俺まさにこんなの食べたいと思ってたんだよ。おいしそう。っていうか愛香は毎回毎回ホントに僕が食べたいと思ってるものを作ってくれてすごいよね。やっぱり僕らって相性完璧だからテレパシーみたいなものあるのかもね。

「そうかもしれないね。」

 

スープの中の見事なまでに細く綺麗に刻まれた人参を見ていると、このスープはもしかしたらずっと永遠に冷めないスープなんじゃないか。晢也さんはそんな風に思っていた。

 

「ところでさ、今日どっか出かけようよ。天気もすごくいいしさ。たまには外に出て遊園地とかデートっぽいことしようか?」

「行きたいけど、晢也さん、具合よくなったばかりでしょ?お家でゆっくりしてた方がいいわよ。また悪化しちゃったら大変でしょ。」

「だいじょうぶだよ〜。せっかくの休みなんだし、たまには家じゃなくて外に出かけようよ。」

「だ〜め。今日はゆっくりお家で過ごしましょ。健康第一なんですから。」

「まじか〜、僕のために〜?」

「そうですよ。」

「なんか悪いね。ごめんね。」

「ううん。お家で一緒にいられるだけでも、愛香は楽しいから。」

愛香は本当に優しいよね。いつでも僕のことを考えて、僕を第一に尊重してくれるよね。」

晢也さんが笑ってくれると愛香もうれしいから。晢也さんの幸せが愛香の幸せなの。だからこれからもずっと、晢也さんが愛香にしてほしい事、したい事、遠慮せずになんでも言ってくださいね。

「じゃぁ一緒にお風呂入ろっか。」

「恥ずかしいです。。」

「またまた〜。早くご飯食べちゃおうか。」

 

 

「僕が体を洗ってあげるからね?ほら、愛香の好きな桃の香りがする石鹸だよ?愛香のためにこないだ買ってきたんだ?こうすると、ほらこうやってこんなに泡が立つんだよ?すごいよねこれ?昨日たくさん汗かいたからちゃんと体綺麗にしないとね?こうやってごしごしってね?痛くない?だいじょうぶ?ちょっと強かったりしたら言ってね?え?痛い?ごめんごめん、じゃあこれくらいは?え?なに?」

 

 

「あ、もしもし、俺です。どうもどうも、いつもお世話になってます〜。はいそうなんですよ、今日も愛香ちゃんと一緒です。いや〜色々最高ですよお陰様で!なんか色々完璧っつうか、はい、そうです、僕の思った通りに僕の言ってほしい事やってほしい事なんでもその通りなもんでびっくりしてましたよ、やっぱりこういうの運命ってやつなんですかねぇ笑。え、そ〜そうなんですよ笑!ええ、そう、まさにそれですよ。僕が飽きない限りこんな生活が続くのかと思うとなんかすっっっごいすよね!

 

 

 

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今回もよろしくおねしゃす。